NARRATIVE
ソメヤとひとびと
布に鋏を入れる瞬間から、仕立てや染色の工程を経て、一着の服が仕上がるまで。
そこには必ず人がいる。技術と誇りがあり、それぞれの暮らしがあり、一人ひとりの物語がある。
色をつくり、服をつくることで、たくさんの手仕事が生まれ、人と繋がり、 輪ができる。
つくることも届けることも、植物の色を纏うように気持ち良く、潔く、美しくありたい。
顔の見える人とともに働き、誰からも、なにからも奪わずに。
風通しの良い、そんな世界をつくれたら。
素材が
うまれる場所
花を摘む、土を耕し種を播く、木の実を集め、樹皮を刻む。色を染めることが、自然と人の営みの中でバランスを保ち、小さくても続けていける仕組みをつくりたい。留まらずに移りゆく自然と向き合い、歩幅を合わせながらの試行錯誤は、数年単位に及びます。
季節ごとの染料植物を集めるのは、野山をフィールドにする蜂獲り師。翌年以降の草木の生長や陽当たりなどを考慮して場所を選び、必要な量を採集します。近隣の農家さんと、休耕田での染料栽培に挑戦したり、就労支援の作業所で働く方々に、間伐材の樹皮をチップ状に加工してもらうことで、廃棄されていたものが資源となり、色を染めることができるようになったりと、私たちの挑戦は多くの人の手に支えられています。
服を仕立てる生地は、農薬を使わずに栽培されたオーガニックコットン。そのほとんどが国外であるために、原料となる綿花を育てる人々や、その土地を身近に感じることは難しいかもしれません。けれど、彼らが正当な対価を受け取り、健やかで美しくあり続けることもまた、私たちが色を染め、服をつくる行為の輪の一部であると考えます。
服をつくる、
仕事をつくる
植物を煮出し、手作業で色を染めることは私たちの原点です。けれどそれは、服をつくる工程の一ページ。染め屋である私たちが、裁断から縫製、仕上げ作業や修繕までの一連を内部で行うことは、小ロットでの生産やセミオーダー、染め直しなど、理想的なかたちで色を届けるための手段です。
一から服を仕立てることができれば、お客様から寄せられる様々な声に耳を澄まし、できるだけストレスのないものを届け、長く着てもらうことができるかもしれない。一人のために、丈を調整したり、ほつれた箇所を修繕したりすることは、大きな仕組みの中では叶いません。小さな輪の中で、一人のための服だって気持ち良くつくりたい。
アトリエでは、信頼できる外部の縫い子さんに助けられながら、初心者から始めた縫製スタッフが日々技術を磨いています。手を動かし、ものをつくることで身につく技術は一生もの。生活や家族のかたちが変わっても、続けていける仕事をつくりたい。仕事があれば、好きな土地で暮らしていける。それはとても自由なことだと思います。